女性建築技術者の会




 『明るくさわやかサニタリー』

 目次

 はしがき




目次
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一章 サニタリーの位置

1 サニタリーはどの位正にあるのがよいのでしょう
2 ぐるりと回れる住まい
3 居間からも台所からも入りやすいサニタリー
4 居間から直接入れる洗面所
5 二階にあるサニタリー
6 物干し場に直結した脱衣所
7 二階にリビング、一階にサニタリー
8 中二階にあるサニタリー
9 小便器を目立たない位置に
10 二つの浴室をもつ住まい
11 忙しい三柿姓の素早い家事、身仕度の工夫
12 サニタリーと寝室はなるべく、くっつけて
13 オープンなユーティリティー
14 廊下にある洗面所兼ミニキッチン
15 外からも入れる海辺の浴室

二章 ひと工夫したサニタリー

1 坪庭をもつ浴室
2 トップライトのあるサニタリー
3 大家族のサニタリー
4 実験用流しを洗面所に
5 窓と鏡を共存させた洗面所
6 洗濯にこだわる人のスマートな洗面所
7 狭い所を目いっぱい利用
8 大きな窓をあけた浴室・トイレ
9 洗濯機置き場をつくつてスツキリしたサニタリー
10 収納を考えたリフォーム
11 ダーティーエントランスの効用―暖房のある洗面所
12 三角出窓でゆったりのんぴりの浴室へ
13 色を統lしてすっきりしたインテリア
14 大便器と小便器があるトイレ
15 三ヵ所設けた洗面所

三章 個性的なサニタリー

1 富士山を眺めながらの入浴
2 温泉でくつろぐ、ゆつたりお風呂
3 大自然を満喫した別荘の浴室
4 太陽熱利用で床噴房したサニタリー
5 三世代住宅のサニタリー
6 太陽熟温水器を兼用する二世帯住宅―ガラスブロックで採光したトイレ
7 バスタイムは庭を眺めながら
8 お年寄りのため寝室から直接入れるトイレと洗面所
9 二世帯住宅とユニットバス
10 つかず離れず二世帯住宅の知恵
11 四つのトイレをもつ店舗つき住宅
12 土間からも入れる農家の脱衣室
13 介護が必要な人のサニタリー
14 車椅子でも使えるお年寄りの部屋のサニタリー

四章 浴室あれこれ


1 浴槽の型式
2 浴室の仕上げ材にはどんなものを―床/壁/天井
3 どんな浴槽が快適か
4 浴室の水栓−サーモスタットは安全―水栓の位置/浴槽には定量止水タイプが
便利
5 シャワーライフ
6 ユニットバス
7 お風呂の給湯設備―給湯器の種類とお湯の出方/最近の風呂釜つき給湯器
8 浴室の出入口
9 浴槽を長もちきせる換気
10 採光と照明―坪庭、トップライトの効果
11 あると便利な浴用品(小物)置き物
12 浴槽のふたあれこれ―握りバーがあると安全
13 足元に汚いお湯がたまらない排水口
14 浴室の暖房
15 二階にある浴室
16 ジェットバス(気泡浴槽)
17 サウナ
18 浴室を乾燥室にすると便利
19 24時間風呂システム―家庭用温泉お風呂
20 外出先からお風呂が沸かせるつて何?

五章 洗面所あれこれ

1 洗面所機能の多様化
2 床、壁、天井の仕上げ材
3 更衣、脱衣のための握りバー
4 洗面台にゲタをはかせる
5 お化粧はどこでしますか
6 シャンプーのできる洗面台について
7 洗濯機を追い出そう
8 ピルトイン洗濯機って何?
9 100ボルトとか200ボルトって何?
10 タオル収納、下着収納
11 窓は壁にとるか、天井にとるか
12 安全な洗面所、そしてお年寄りのことなど
13 赤ちゃんや子供と洗面所
14 洗面台のカウンタートップ
15 壁クロスに防カビ用を選ぶ場合と紙を選ぶ場合
16 洗面所をちょっとリッチに
17 ウインドー・トリートメント
18 システム洗面台
19 カラースキームと素材

六章 トイレあれこれ

1 トイレの広さ
2 3尺角のトイレはなぜ使いにくいのだろう
3 温水洗浄トイレ
4 洗浄方式による便器の種類―よい便器の条件
5 手洗い器の必要性
6 小便器の必要性
7 トイレの出入ロ
8 収納について
9 トイレの床、壁
10 換気について
11 トイレの音
12 トイレの照明
13 暖房はどうするか
14 掃除と洗浄剤
15 芳香剤・消臭剤
16 健康とトイレ
17 高齢者夫婦のトイレ
18 下水道のことを考えてみましょう

あとがき


はしがき
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「サニタリー」という言葉には、まだなじみが薄いかもしれません。もともとは「衛生的な」という意味の英語ですが、住宅で「サニタリー・セクション」というと浴室、洗面所、トイレのことを指します。この部分はキッチンと合わせて、住宅の「水まわり」ともょばれ、多くの水を必要とする場所で、給排水衛生設備のほとんどがここに集中しています。
 だからでしょう。最近のサニタリーの設備的な技術革新はめざましいものです。ほんの三、四十年前までは、都会でもほとんどの家がトイレは汲み取り式でしたし、風呂もまきや石炭で沸かすのが一般的でした。洗面所に至っては、部屋として確立している家のほうが少なかったように思います。
 さらにさかのぼれば、お湯につかる風呂の入り方も江戸時代後期からのもので、それまでは熱した湯気にあたる蒸気浴が主流だったようです。現在では日本人のお風呂好きは伝統的なもののように思われていますが、庶民が比較的自由に入浴できるようになったのは、ここ百年ぐらいのことです。
 このように、日本では蒸気浴に加え、湯の中につかって暖まるという、世界でも独自の入浴型式をもつようになり、したがって住宅の浴室も独自のものになりました。高温多湿の気候や、比較的水が豊かな国土が現在の入浴習慣を定着させたのでしょう。欧米では、バスルームとよばれる部屋は湊室に付属するか、近くに配置され、トイレも洗面台もその部屋の中に置かれるのが普通です。日本でのように浴室内に湯気をたちこめさせ、浴槽を出て洗い場で洗う入浴様式では、欧米のようなスタイルはとれません。住宅が洋風化したとはいえ、今のところ浴室内にトイレが同居するのは、ワンルームマンションのユニットバスに限られているようです。
 トイレについては、原始時代は野山や川で用をたしていたのでしょうが、定住して農耕を営むようになってからは、肥料としての人糞の利用のため一定の場所にためるようになったといわれています。これはアジアの農耕民族には広く見られる習慣です。自然へのサイクルという点で考えれば、非常にすぐれた方法の一つだったわけです。
 しかし、今の子供たちが汲み取り便所を極度にいやがるのにも道理はあるわけで、そのにおい、非衛生的なことは私たちが経験してきたとおりです。トイレが水洗になり、洋風便器が普及してそのイメージもかわり、住宅内での配置も大きく変化しました。
 今では、ガス、石油、電気などのエネルギー源の普及と、上下水道の設備に支えられて、どの蛇口からもお湯が出て、ボタンひとつで適温のお湯が浴槽に張れ、トイレの汚物もアッという間に目の前から消えていくという以前からみれば夢のような生活が可能になりました。
 若い人たちは、毎朝髪をシャンプーし、汗をかけばすぐにシャワーを浴び、口臭を消すためにマウスウォッシユを欠かさないそうです。トイレでは使用後局部を洗浄することのできる製品も開発され、時代はより清潔に、より清潔にと要求しています。
 また、ホームオートメーションにより浴槽にお湯を自動的に張ることはおろか、外出先からでも電話によってお場を張ることも可能になっています。トイレに人が入るとセンサーで感知し、照明も換気扇も自動的につき、手を出せば水が出てくるということも可能です。何事にも自分の体や頭を使って手間ひまかけることをいやがる傾向も顕著です。
 仕事人間の夫たちからは、せめて家に帰ってからお風呂でゆっくりしたいと、気泡浴槽を望まれることも多くなってきました。トップライトのある浴室、ゆっくりくつろげるトイレなどサニタリーへの要求もだんだんにぜいたくになってきています。
 一方、主婦はアルミサッシュやコンクリートで気密性が高まったために発生しやすくなった浴室のカビの掃除に頭を悩ませています。雨の日の洗濯物干し場として浴室を利用したいという声もよく開きます。サニタリーまわりに増えた物の収納も不満の種です。各人が自分用のシャンプーやリンスをもち、男性用化粧品やドライヤー、体を洗う道具もいろいろ、タオルの使用量も増えれば、収納が足りなくなるのは当然です。
 浴槽やトイレの衛生陶器の色も増え、雑誌やカタログで見るサニタリーの写真はどれも美しくうらやましい限りです。最近では洗面所をグルーミングルームなどと名づけて、より多機能で快適な空間にと提案されています。しかし、運動靴を洗う場所、浴槽のふたを置く場所などを考慮に入れず、ただ美しく快適にというわけにはいきません。バケツや雑布置き場もいりますし、赤ちやんのおしめの下流いをする場所も必要です。こういう点を解決せずに見かけだけきれいにすることはできないはずです。
 このように世の中全体が、快適さ、清潔さ、便利さ、美しさを求める一方で、自然破壊、エネルギーの使いすぎ、考えない人間の増加なども憂慮されています。地球全体の規模で考えれば、はたして快適とよべる状態に向かっているのかどうか、常に考慮しなければならない時代なのではないでしょうか。簡単に取り付けられるユニットバスも、寿命がくればただの大きなプラスチックのゴミの塊です。また、一度機械が故障したり、操作を誤れば何もできないじゃま者になりかねません。原子力発電に至っては、人類の存続の危機さえ起こしかねないのです。時代のかわり目には、必ず懐古的な思想が起こってくるといわれています。単に昔はよかったと言うつもりはありません。まだまだ改良したいこともたくさんあります。しかし、現在の日本でのように、何もかもハイテクに頼り、膨大なエネルギーや水を使って問題を解決しょうとする時代の流れには疑問をもたざるをえないのです。
 このように、サニタリーには気になることがたくさんあります。この本で私たちは建築家の立場、そして主婦としての立場で経験したことを、失敗も含め、まとめてみました。サニタリーもキッチン同様、そこに住む家族によってそれぞれ違ってきますし、また時の流れによってかわってくるでしょう。あなた自身が考える際の参考にしていただければ幸いです。