収納の使い勝手を改善
  マンション住戸を設計変更
桧垣葉子

 「個室が二部屋あって、ウオークインクロゼットもあるし、大体は満足しているんですけど
 二十代の若い夫婦が、購入した建設中のマンションの間取り図を持って、私の設計事務所に相談に来ました。
 夫は工業デザインの勉強をした後、イベント関係の会社で働き、同い年の妻もモダンなデザインが好きという二人。希望の場所に念願のマイホームを手に入れた。おしゃれで気に入っているけれど、使い勝手は良いだろうか。生活実感が浅くて、物件の良しあしの判断に自信がない。言外に、そんな不安がのぞいているように思えました。
 図面を見せてもらうと、十畳ほどの食堂兼居間に、独立したキッチン、二つの個室。それまで、キッチンを含め二部屋の狭いアパートで暮らしていた二人には、一大決心だったことでしょう。
 でも、図面を見た範囲では、使い勝手に問題がありそうでした。
 ウオークインクロゼットは変形している上、奥行きが百二十センチと深く、びっしり詰め込むと、奥の物が取り出しにくい形。小さい方の個室は縦横の寸法が中途半端で、ベッドを置くとデッドスペースができてしまいます。
 「多少の設計変更は間に合う」という話だったので、収納量を増やすこと、「仕事上、必要」というパソコンで作業するためのコーナーを組み込むこと、ベッドを無駄なく置ける寸法を確保することの三点を実現するプランを提案しました。
 収納の基本は、出し入れがしやすく、何がどこにあるかがすぐに分かり、物が使われる場所の近くに片付けられることです。それは衣類でも台所用品でも雑貨でも同じ。そうやって一つ一つの物について、しまう場所を明確に決めておけば、生活も掃除も楽になります。
 変更案では、ウオークインクロゼットは奥行き六十センチに変えて普通のクロゼットにし、ほかにTシャツや肌着などの衣類と、季節外の寝具をしまえる天井までの物入れを造りました。
 コンパクトながら必要なものが備えられ、二人ともとても満足だったようで、友人を呼んで引っ越しパーティーをしたときには、真っ先に収納とパソコンコーナーを披露したそうです。
(桧垣葉子、一級建築士)