地域で子どもを見守る家
  一室を散らかし放題に
岡部千里

 「家の中はいつも整然と片付けておきたい性分なので、すぐ散らかす子どもたちをしかってばかり。本当は好きなことをさせて、のびのび育てたいんですけれど、つい口が出ちゃって。思うようにいきません
 そう言いながら私の事務所を訪れたのは、教師として働きながら、小学四年生を筆頭にゼロ歳児まで四人の子どもを育てる山梨県在住のWさん。私が設計した「散らかしっぱなしOK!の家族図書室のある家」をホームページで見て、「散らかすのが仕事の子どもたちと折り合いをつけられる家づくりをしたい」と連絡をくださいました。
 建設予定の敷地は、人の往来が多い割には、車が入ってくることはほとんどないという、考えようによっては子育てに絶好の環境。家の一部を地域に開いて、そこを近所の子どもたちのたまり場にしてしまいましょう!と提案しました。
 夫婦二人だけで四人の子どもを育てるには、忙しすぎて心にゆとりがなく、小言ばかり。それなら、近所のおじいちゃん、おばあちゃん(血縁なし)に子育てを手伝ってもらえる家づくりをすればいい。名付けて「子どもだまりのある家」。地域ぐるみで子どもを見守る家、いわば私設子ども園みたいなものです。
 道に面した一室を子どものたまり場にして、近所の子どもたちはいつでも出入り自由。もちろん、保育士さんはいませんが、近所のおじいちゃん、おばあちゃんに見守り役になってもらって、散歩の通りがかりに部屋の中の様子が見える仕掛けをつくりました。近所の子どもも含め、この部屋だけはどんなに散らかしてもOK! 大人は見ぬふり、知らんぷりです。
 その代わり、キッチンを挟んで反対側に位置する、家族だけでくつろぐためのリビングには、子どものおもちゃや絵本の持ち込みは禁止というルールを決めました。そうすれば、子どもも大人も自分の居場所ができて、お互い干渉しすぎないで、家事や子育ても楽。子どもをしかる回数も、ぐっと減るはずです。
 「大人黙りになれるか!?」。これが目下のWさんの宿題です。
(岡部千里・二級建築士)